大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和53年(ネ)2833号 判決 1984年4月25日

主文

第一審原告及び第一審被告の本件各控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は、それぞれの各控訴について、第一審原告及び第一審被告の各自の負担とする。

事実

第一審原告は、「原判決のうち、第一審原告敗訴の部分を取り消す。第一審原告と第一審被告との共有にかかる原判決添付物件目録記載の山林を、現物分割の方法により第一審原告と第一審被告との持分(各二分の一)に応じて分割する。第一審被告は第一審原告に対し、金五九七万五〇〇〇円及びこれに対する昭和四〇年九月一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一・二審とも第一審被告の負担とする。」との判決並びに金員支払を命じる部分につき仮執行の宣言を求め、第一審被告の控訴について控訴棄却の判決を求めた。

第一審被告は、「原判決のうち、第一審被告敗訴の部分を取り消す。第一審原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は第一・二審とも第一審原告の負担とする。」との判決を求め、第一審原告の控訴について控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の主張及び証拠関係は、次のとおり訂正及び付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の訂正)

1  原判決三枚目裏一一行目「七月傾」を「七月頃」と改める。

2  原判決添付物件目録のうち、(一)(8)中「弐八五弐八平方米」を「参八五弐八平方米」と、(一)(9)中「八五参八平方米」を「壱壱八四四平方米」と、(一)(13)中「壱参五七九平方米」を「壱六四壱参平方米」と、(二)(7)中「壱弐六九七平方米」を「九参九壱平方米」と、(三)(2)中「同所同第弐」を「同所同番の弐」と、それぞれ改める。

(当審における当事者の主張)

一  第一審被告

第一審被告は、本件(一)ないし(四)の山林のみでなく、平口義郎及び平口斎所有名義のものを除く、平口家の山林を父亡平口熊吉の生前から管理してきているが、昭和四〇年当時、本件(一)の(22)、(23)、(37)、(38)の山林の一部については、杉、檜の伐期が到来しているうえ、その周囲に松、竹、雑木が生立して、杉、檜の成長を妨害しているので、杉、檜等を伐採して、再造林しなければならない状況にあつた。第一審原告は右山林の管理を第一審被告に一切委せ切りで、自分では管理をしなかつたので、第一審被告は第一審原告のための事務管理として、右山林の杉、檜などの立木約四九五〇石を柳川製材及び大井製材に売却して、右両会社がこれを伐採したものであつて、その売買代金のうち第一審原告の取り分は既に同人に交付している。しかも、右立木の売買価額も適正であり、したがつて、第一審被告が行つた右立木の売却・伐採はなんら不法行為にはならないから、第一審原告の本件損害賠償請求は失当である。

二  第一審原告

第一審被告の右主張は争う。

(当審で取り調べた証拠)(省略)

理由

当裁判所も、第一審原告の本訴のうち、本件(一)ないし(四)の山林の共有物分割請求は理由がなく、損害賠償請求は、金七一五万円及びこれに対する不法行為の後である昭和四〇年九月一日から完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求は理由がないと判断するものであり、その理由は、次のとおり訂正及び付加するほか、原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の訂正及び付加)

1  原判決一二枚目表九行目「原告本人」を「原審における第一審原告本人」と、同裏二、三行目「原・被告本人」を「原審及び当審における第一審原告及び第一審被告本人」と、原判決一三枚目表三行目「被告本人尋問」から同四行目末尾までを「原審及び当審において、第一審被告は右主張に副う旨の供述をし、当審証人河辺武司も、同日第一審原告が右の承諾をしたかのような供述をしている。」と、同八行目「原告本人尋問」を「原審における第一審原告本人尋問」と、それぞれ改め、同裏六、七行目「証人河辺武司」の前に「原審における」を加え、原判決一四枚目表二行目及び同一〇行目の各「原告本人尋問」をいずれも「原審における第一審原告本人尋問」と改め、同一一行目「照らせば、」の次に「前掲の原審及び当審における第一審被告並びに当審証人河辺武司の各供述はにわかに措信することができず、かえつて、」を加える。

2  原判決一四枚目裏九行目「また、」から同一〇行目「主張するが、」までを「また、仮に、第一審被告の前記主張が、第一審被告は、第一審原告が昭和四〇年三月一日に本件(一)の山林の伐採を承諾したと考えたとの趣旨を含むとしても、」と改める。

3  原判決一六枚目表九行目、同一一行目、同裏五行目、原判決一八枚目裏二行目、同五行目、原判決一九枚目表二行目、同裏二行目、原判決二〇枚目表六行目の各「被告本人」をいずれも「原審における第一審被告本人」と、同八行目「及び原・被告」を「並びに原審における第一審原告及び第一審被告」と、それぞれ改め、原判決二一枚目表五行目「右履行の提供」の前に「原審における第一審被告本人の供述及び弁論の全趣旨によれば、」を加え、同八行目「ないから、」を「ないと認められるから、」と改める。

4  原判決二二枚目裏一、二行目「被告本人尋問」を「原審及び当審における第一審被告本人尋問」と、同七行目「証人松本健」から同八行目「各参照」までを「原審証人松本健(同証人調書九丁)、同柳川金雄(同証人調書一二丁)の各証言によれば、第一審被告の右の判断は客観的にみても相当であることが認められる。」と、原判決二三枚目表三行目及び同一〇行目の各「原告本人尋問」を「原審における第一審原告本人尋問」と、同六行目「被告本人尋問」を「原審における第一審被告本人尋問」と、それぞれ改め、同一〇行目「のみでは、」の次に「右第一審被告本人の供述に対比して、」を加え、同裏六行目「及び原・被告」を「並びに原審における第一審原告及び第一審被告」と、原判決二四枚目裏一、二行目「一八六条」を「一八六条本文」と、それぞれ改め、原判決二五枚目表三行目「場合は、」の次に「一般的には、」を加え、同裏三、四行目「被告本人尋問」を「原審における第一審被告本人尋問」と改める。

5  原判決二七枚目表八行目「より高度な」を「長子相続制度を廃止し諸子均分の相続制度を貫く、より高次の」と改める。

6  原判決二八枚目表七行目「被告本人尋問」を「原審及び当審における第一審被告本人尋問」と改める。

7  原判決三〇枚目裏四行目の次に、改行して次のとおり加える。

「五 以上、前記二ないし四に説示したとおり、第一審原告の主張はいずれも採用することができず、第一審原告の本件(一)ないし(四)の山林についての民法二五六条一項に基づく共有物分割請求は、森林法一八六条本文に抵触するから、法律上許されない。したがつて、その余の判断をするまでもなく、右請求は理由がない。」

(当審における第一審被告の主張についての判断)

第一審被告が、昭和四〇年に至るまで本件(一)ないし(四)の山林を管理・育成して来ており、長年の経験に基づいて、本件(一)の(22)、(23)、(37)、(38)の山林の一部に生育している杉、檜等の立木については、既に伐採すべき時期が到来しているものと判断して、これらの立木を柳川製材及び大井製材に売却して伐採させたものであり、かつ、第一審被告の右判断が客観的にみても相当であり、右売買価格も適正であつたことは前認定のとおりである。しかし、原判決の理由第二、二、2に認定したとおり、第一審原告は、右立木の売却・伐採については、終始、断固反対する旨の意思を第一審被告らに表明しており、第一審被告は、それにもかかわらず、第一審原告の明示した意思に反して前記の売却・伐採を敢えて強行したものであり、かつ、これに反対する第一審原告の意思が強行法規又は公序良俗に反すると認めるに足りる証拠もないから、右立木の売却・伐採は第一審原告のための事務管理と認めることはできず、同人に対する不法行為になるというべきである。したがつて、第一審被告の当審における主張は採用することができない。

(結論)

以上の次第で、第一審原告の本訴のうち、本件(一)ないし(四)の山林の共有物分割請求を棄却し、損害賠償請求は前説示の限度でこれを認容し、その余の請求を棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であつて、第一審原告及び第一審被告の各控訴はいずれも理由がないから、これをいずれも棄却することとし、控訴費用の負担について、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例